「伊賀越道中双六」の魅力③ 「岡崎」を中心に
2013年11月5日更新
9月19日 犬丸治Facebookより
国立小劇場・文楽「伊賀越道中双六」・第二部「藤川新関
きのうもお話したように、この狂言は全編通して質実剛健
そこで客の肩ほぐしにと、助平の遠目鏡の先に見えた、と
歌舞伎でも、通し狂言のとき、狂言を真ん中で分けて、中
さて、舞台は再び新関に戻ります。助平から関所の切手(
ここから「竹薮の段」になります。
場面は変わりませんが、下手から女ものの乗物(駕籠)に
彼は、誉田家での奉書試合で政右衛門と立会い、逆に非力
駕籠が去ると、林左衛門とこの地のごろつき蛇の目の眼八
蛇の目の眼八は、続く「岡崎」でも登場する狂言廻しです
この二人が去った影を追ってきたのは、鎌倉飛脚にやつし
林左衛門がいるまらば、その先に股五郎がいるに違いない
政右衛門は雪の竹薮の抜け道に踏み込んでいきます。
ここは、雪の積もった竹薮の闇の簡潔な装置の中を、政右
政右衛門の腹掛の文字は「文」ですが、戦後まもなくまで
「又」の字だったそうです(吉田玉男「文楽芸話」)。
今月の玉女も堂々たる出来ですが、十五年前東京での通し

- 犬丸 治 いぬまる・おさむ
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演劇評論家
1959年東京生れ。慶應義塾経済学部卒。
「テアトロ」「読売新聞」に歌舞伎評掲載。歌舞伎学会運営委員。著書「市川海老蔵」「歌舞伎と天皇 『菅原伝授手習鑑』精読」(いずれも岩波現代文庫)ほか。